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通勤の途中で その1

目撃


私は見た。
一部始終を。
ガタン、ゴトンと
電車のドアにもたれながら。
まるで一幕の芝居だった。
出演は3人の
小学生の女の子たち。
お揃いの制服にランドセル。

ひとりの一番背の高い
おとなびた顔立ちの女の子が
ひとりの子を従え
色白の気の弱そうな子に
「一緒に帰りたくないの?
そうならはっきりと言いなさいよ。
言いなさい。
一緒に帰りたくないってはっきり」

その口ぶりに慄然とする。
柔かく、冷たく
ねちねちと底意地の悪い
その言いようは
7~8歳の子とは思えない。
見据えた目の
残酷な光を
私はあらぬ方向をむきながら
視界の片隅で、見逃せなかった。

言われている子は
懸命に歯をくいしばり
何も言い返さずに
うつむいて
こらえている。

「何にも言わないの?
じゃあいいわよ。
あっち、行きましょ」と
促して車両の一番端の
出口にふたりして
歩きだした。

見送る子の左右の眼から
一粒ずつ涙がもりあがり
ゆっくり
ひとすじずつ真っ白な
やわらかいほほを伝って
顎の先で合流する。

たまたま近くで一部始終を
見聞きしてしまったわたし。
胸をしめつけられるような
気持ちになる。

二つ先の駅で、
意を決したように
トコトコとその子は二人を
追って歩きだした。
内心ハラハラしていると
背の高い子はどうやら
降りてしまったようで、
家来の女の子と二人
頭をくっつけあって
内緒ばなしのように
楽しそうに話している。

何だかホッとした。

それにしてもよほど
強いストレスがあるのだろうか。
背の高い子のものいいと
いたぶり方には畏れ入った。
ひとの
こどもの
おんなの
身震いするほどの
残酷さ。

私はまだ見ぬ先の物語まで、
電車が渡る鉄橋の下の
夕陽を反射する水面を見ながら
想像をたくましくすることを
がまんできなかったが、
そのとき 「はあっ」と
ひとつ大きなため息を聞いた。

ドアの反対側に立っていた
高校生のひとりの男の子も
私と同じ一部始終を
目撃していたのだった。
彼が感じた何かは
私とはまた別のものかもしれない。

ふたりの観客は
同じ駅で降りると、
それぞれ反対側の方向に
歩き出した。
おそらく
それぞれがたまたまみた
一場を反芻しながら。




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